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2025/04/06 15:20

amblinminiは夫婦で運営しておりまして、私たちはどちらも英語が得意ではありません。今回のデンマーク旅行では重要な人たちと面会します。貴重極まりない機会ですからコペンハーゲン在住の日本人通訳さんに依頼しました。Andersenさん、日本名は海野さんです。Museum WegnerのAnneさんとの面談、3つの家具メーカー訪問に同行してもらいました。単に通訳だけでなく家具インテリア業界に詳しい海野さんのお陰で私たちのデンマーク旅行はとても有意義なものになりました。

コペンハーゲンで海野さんと待ち合わせ、タクシーでAllerødのPPMøblerに向かいます。
私が初めてPPMøblerのカタログを見たとき、その時の自分には到底作ることができない椅子ばかりでした。のちにPP66、PP130サークルチェア,PP250バレットチェアなど作りましたが、どれも極端なくらい難しい椅子です。これらの実物をPPMøblerが製品化したことに感心してしまいます。
とても閑静な住宅街の中にPPMøblerはあります。Sales ManagerのMr. Hugoが迎えてくれました。
食堂でしばらく待っているとCEOのMr. Kasper Pedersenが現れました。身長190㎝くらいあるでしょう、かなり背が高いです。動画などで見覚えがあるMr. Kasperは少しとっつきにくいかなと想像していましたが、会ってみるとフレンドリーで話しやすくとてもいい奴という印象です。
PP250バレットチェアはミニチュアを作ってみて最難関の椅子のひとつだと認識しています。私は言いました。「この椅子は難しい。その理由の一つは座板を可動させるためのヒンジが完成後に調整できないからです。また座板を起こしたとき、座板後ろのズボンを掛けるラインが水平でなければならない。このとき座板の前端は両前脚に等しく接触していなければならない。これはほとんど不可能です。」これにはMr. Kasperも「確かにほとんど不可能だ。でも完全に不可能ではない。だからわれわれはこれに取り組んでいる。」と笑っていました。

PPMøblerは従業員30名ほど、超少数精鋭の家具工房というイメージです。皆自分のエリアで自分の仕事に集中しており、ベルトコンベヤーの周辺での流れ作業という風景はまったくありません。
PP130サークルチェアの製作ではひとつの椅子に使う部品の木目を合わせている場面に出会いました。1脚の椅子の製作をひとつの芸術作品を作ることに昇華しているかのようです。
建物も古く、最先端の工場というイメージではありませんが、ここでしかできない最高品質のモノを作ろうという気概に満ちた製作現場です。ここにWegnerさんが通っていたと思うと感慨深いものがあります。

今回通訳さんがいますが、私はできるだけ自分の言葉で話したいと思い、面会する相手ごとに英語での会話ノートを作っていました。この時はPPMøbler の創業者でありMr. Kasperの祖父Mr. Ejnar PedersenとMr. Hans J. Wegnerについても話すことができました。

ベアチェアの製作時、「張り枠の見えない部分はあまり奇麗に仕上げる必要はない」と言ったWegnerさんに対し、Ejnarさんは「見えないところでも美しく仕上げるのが自分の誇りだ」と怒った。このことからWegnerさんはEjnarさんをより一層信頼するようになった、という有名なエピソードがあります。
これは、Mr. Ejnar Pedersenの品質に対する確固たる信念が当時のデンマークでも稀であったことを意味します。彼の信念は3代目のMr. Kasperにも受け継がれ、PPMøblerは唯一無二の家具メーカーであり続けています。

今回私は3つの家具メーカーを訪問して、各家具メーカー間の人の移動が意外に多いことを知りました。Carl Hansen&Son からFredericia に移った人、Fritz HansenからFredericia に移った人、Fredericia から PPMøblerに移った人、今回だけで3人出会いました。移った理由はわかりませんがそれが特別なことではないようです。だから各会社は社員を大切にして長く働いてもらおうと努力するのでしょう。
しかしながら、社員をとても大切にしているように見えるデンマークの企業は時として簡単に社員を解雇するようです。これは公務員も同じで、市の財政がひっ迫すると、市の職員を解雇することも珍しくないとか。でもこのような時に再就職、再出発がやりやすいのもデンマーク。こういうことが日常であれば、働く社員も会社に執着することなく働きやすさや条件次第で割と気軽に転職するのかもしれません。