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2025/02/08 12:40

今日は旅の目的4番目、Fyn島南東部の港町SvendvorgにあるFredericia Furnitureを訪問します。
朝、OdenseのホテルからSvendvorgまでタクシーで向かいました。

Fredericia Furnitureは1911年にユラン半島東岸のFredericiaにて創業された会社です。Fredericia以外にSvendvorgにも製造拠点があり、ここでOXチェアが生産されていることを私は最近知りました。

Wegnerさんが1960年にデザインしたOXチェアはAP StolenがAP69という品番で製造していましたが1974年にAP Stolenは廃業。1989年からはErik JorgensenがEJ100という品番で生産を開始します。2020年、FredericiaはErik Jorgensenを傘下に収め、OXチェアの製造権はFredericiaに移りました。ここからFredericiaがOXチェアを製造することになります。品番はEJ100のままです。その一方で現在もErik Jorgensenはブランドと生産を維持しています。どういうことなんでしょう?

もう少しデンマークの家具メーカーについて触れます。Wegnerさんの親友だったBørge Mogensenさんはデンマークの生活協同組合F.D.Bの家具開発責任者に就任して1947年に名作J39を発表しました。その後F.D.Bが衰退しBørge Mogensenさんは独立。F.D.BはKvist社に買収され、J39の製造権はKvist社に移りました。
1955年、早くからMogensenさんの才能に注目していた実業家のAndreas Graversen氏がFredericiaのCEOに就任。Mogensenさんと二人三脚で、高い技術力により名作家具を次々と生み出していきました。J39の製造権はKvist社からFredericiaに移り、現在も生産が続いています。しかし今でもF.D.BとKvist社は家具を生産しています。
家具メーカーが廃業したから製品の製造権が譲渡されるのは理解しやすいですが、廃業しなくても様々な事情で製造権が移ることがあるわけです。日本の家具メーカーしか知らない私からすると興味深いことです。


ちなみに「Fredericia」を「フレデリッスィア」と英語式に言われたら聞き取れますが、デンマーク語の発音ではまず聞き取れません。口の中で舌をどう動かしているのか、その発音を真似ることは不可能です。他にもPPMøblerの所在地「Allerød」も発音できません。鉄道を利用した時、車内放送で駅名を聞いても普通の日本人は聞き取れないので要注意です。

着きました!
前もってグーグルマップの衛星写真で確認しましたが、かなりの広さがあります。Fredericiaの本社工場はさらに広大です。建物はすべて平屋で天井高はそれほど高くありません。これは冬季の暖房効率を考えてのことだと思います。
スタッフのMs. Mriaが出迎えてくれました。そして今回の訪問のきっかけを作ってくれたクラフトマンのMr. Henrikと共にショールームで記念撮影です。

Andreas Graversen氏の孫にあたるMr. Rasmus Graversenが2024年5月に35歳でCEOに就任されました。Mr. Rasmusはこの前後2週間ほどロンドンに出張中でお目にかかることはできませんでしたが、Mr. Rasmusは私のミニチュアに大変興味を持って下さっていて、必ず私の連絡先を聞いておくようにとMs. Mriaに指示されたそうです。ありがとうございます。
若いだけあっていつも精力的に国内外を飛び回っておられるようです。
訪問の後すぐにメールでお礼とご挨拶することができました。


さあ、工場を見学です。ここでも作業している社員の顔は撮影してはいけないということと、さらに写真をSNS等に使う際はすべてMr. Rasmusの許可が必要との注意を受けました。

見学したのはOXチェアなど張りものの椅子を製造している部署です。ここがメインの建屋で、オフィス、ショールーム、食堂もありました。

Mr. Henrikが担当している木部フレームにウレタンを貼り付けるセクション、Mr. Wiggerが担当している革を張るセクションなどは特に念入りに見せてもらいました。

OX Chairの内部フレームは非公開とのことでしたので、写真は控えます。

出荷を待つOX ChairとSavannah Chair Petitです。


Børge MogensenさんのSpanish ChairやJ39の製造はここではないようです。む~、見せてもらえばよかった。

工場内は整理整頓が行き届いており清潔です。ここでも社員間のコミュニケーションがとても良好でアットホーム的な雰囲気です。そして社員が大切にされていると感じました。だからこそ社員はより良い仕事をする意欲が高まります。私が勤めた日本の家具メーカーのなかにはデンマーク人の爪のあかを飲ませたいところもあるくらいです。

工場訪問が終わりました。美しさを追求するからこそ高度な技術を要求するデザイン、それに応え具現化する製造現場、それらすべてを支え後押しする経営者、デンマークデザインを継続させる底力のようなものをここでも感じることができました。

私はFredericiaには2024年2月まで接点を持っていませんでした。急な願いをかなえて下さったCEOのMr. Rasmusに感謝します。
Svendvorgの駅までMr. Henrikが車で送ってくれました。
Fredericiaの皆さん、ありがとうございました。

Svendvorg駅前の様子です。これから鉄道でOdenseに戻ります。

明日はユラン半島の東岸Horsensでデンマーク人の友人が経営するインテリア雑貨のショップ Brainchild Originalを訪ねます。